手拭きのタオル

手拭きのタオル

とある友人の部屋に遊びに行くたびに、気になっていることがありました。

友人が住んでいるアパートには独立した洗面台は無く、手を洗う時はキッチンの流しを使っていました。そこに掛けてある手拭き用のタオルが、いつ行っても同じものなのです。

友人の家は駅からも学校からも近いため、毎週のように訪れていたのですが、何度見ても全く同じタオルがそこに掛けられているのです。

最初は同じ柄のタオルを何枚も持っているのかと思っていたのですが、何度か遊びに行くうちにそうではないとわかりました。手拭きはあれしか使わない、といった妙なこだわりでもあるんだろうか?疑問に思いながらも、あえて聞いたりはしませんでした。

つい先日、その友人宅で酒を飲んでいた時です。ふとあのタオルが目に付いた私は、思い切って聞いてみることにしました。なぜあのタオルばかり使っているのか、タオルなら他にもたくさんあるんだからたまには違うのを使えばいいのに、と。

すると友人はキョトンとして「代える必要なんてあるの?」と言いました。

その友人の様子を見て嫌な予感がした私は、恐る恐る聞きました。

「……まさか、あのタオルって掛けっぱなし? 洗ったりしてないの?」

友人は当然といった顔で頷きました。なんと、使い始めてからまだ一度も洗濯していないんだとか……。

私は潔癖症というわけではありませんが、あまりの衝撃に酔いもすっかりさめてしまいました。

友人いわく、洗ったあとの清潔な手を拭くんだからタオルが汚れるわけが無い。濡れたところでしばらく使わなければそのうち乾くんだからそれでいいと思っていた、とのこと。

その後、いくら綺麗な手でしか触れないとはいえ、使っていれば多少は汚れるし、濡れた状態で放置すれば細菌だって繁殖するものだ、と頑張って説明しました。酔っていた友人がそれをきちんと理解したかは、次に友人の家を訪れた時にわかると思います……。

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つつぬけな修羅場

夜中に友人からメールが届きました。遅い時間に連絡をよこすことなどめったに無い相手だったので、何事かと思ってメールを開くと、本文には「修羅場!」とだけ書かれていました。

全く意味がわからず、どういうことかと返事を返すと、しばらくして今度は長文のメールが帰ってきました。

その内容によれば、友人の隣の部屋で住人がなにやら喧嘩をしていて、それがほぼ筒抜けで聞こえてくる、とのこと。友人の住むアパートはそれほど壁が薄いわけではないはずなので、かなりの大声で口論していることになります。

声の数からして、隣の部屋には女性が2人と男がひとり。言い争っているのは主に女同士で、聞こえてくる内容から察するに、男が二股をかけていたのがバレて喧嘩になったんだろう、と友人は言いました。女性は2人とも、自分こそが男の恋人で、もう1人のほうはただの遊び相手だと互いに主張しているのだとか。

二股かけるようなやつなんかやめればいいのにな、と思っていると、友人から今度は電話がかかってきました。「メールを打つのが面倒になったから電話で実況中継する」と笑いながら言う友人に呆れながらも、自分もつい野次馬根性を発揮してしまいました。

その後、言い争いはどんどんエスカレートし、やがて互いに罵詈雑言を浴びせるようになっていったそうです。もう男の声はまったく聞こえず、部屋にいるのかいないのかもわからない、と友人は言いました。

その直後です。電話口で友人がふいに吹き出しました。何事かと聞くと、友人は必死に笑いを堪えながら、「か、片方が、この泥棒猫!って言った」と。

私も夜中であることを忘れて笑い転げました。

泥棒猫。そんなドラマでしか聞かないような台詞を言う人間が現代にいただなんて。私と友人は携帯越しに2人で笑い続けました。

その後、私たちの笑いがおさまったころには、もう喧嘩の声は聞こえなくなっていたそうです。もしかしたら友人の笑い声が隣の部屋に聞こえたのかもしれませんね。

隣人の修羅場がその後どうなったのか。もし知ることができるのなら知りたいものです。

特に、「泥棒猫!」と言い放った女性はいったいどんな人物なのか。かなり興味あります。